高効率の化学反応を実現するソノリアクターを作製するために、ソノケミストリーのメカニズムを明らかにする基礎的な実験を行った。化学反応の発端であるキャビテーション気泡の成長および消滅のメカニズムが重要であることに着目し、キャビテーションの成長消滅モデルを考案した。このモデルは私が行った実験結果のすべてにつじつまが合い、すでに報告されている現象にもつじつまが合うことから基本的に正しいモデルと考えることができる。この結果を基に高効率の化学反応を実現するソノリアクターを作製し、試験管内でのラジカル生成分布を超音波を照射しながらリアルタイムで計測することに成功した。血液中でもラジカル生成を確認し、計測が可能であることも確認した。生存中のラットを扱う実験ではラジカル(超音波によって生成したものではない)を体内で計測できることまでを行った。 私の提案した手法により、少ない信号線でフルアレイに匹敵する自由度を持った音場制御が行えることをコンピュータシミュレーションにより明らかにした。また実際のPMN-PTの素子を用いて信号を発生させることにも成功した。単純なサイン波だけでなくコード変調した波形も自由に発信することにも成功した。しかしながら、今回の研究に使用した非線形材料のPMN-PTから送出される超音波信号は非常に微弱であり、100kPaを超える強い超音波を必要とするソノケミストリには応用しにくいことも明らかになった。原理的な確認は実験で実証することができたため、現在は非線形特性(2乗特性)を持ち強力な超音波を発生させることのできる材料の選定を行っている。
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