研究概要 |
本年度は,3次元濃淡画像に対する線図形抽出アルゴリズムの開発と胸部X線CT像に対する肺腫瘤の良悪性鑑別のための特徴量の提案を行った.前者は医用画像のみならず3次元濃淡画像一般に適用可能なアルゴリズムであり,人間が3次元濃淡画像中に存在する構造を理解する上で有用な線図形を抽出する点で意義深い.また,後者は,観察ツールを用いた医師の診断と対をなすものである.具体的には,医師が診断に用いる医学所見を数値に置き換えることによって診断を支援するとともに,医師の診断経験によらない客観的な特徴抽出を可能にする.とくに,本年度は医師が良悪性鑑別を行う際に重視する所見である"集束"'を定量化した.従来から集束を定量化する試みはいくつか提案されているが、それらはおもに肺血管や気管支の集束を対象とし,腫瘤周辺の局所的な所見を定量化するものであった.そこで,今回,腫瘤周辺と肺野全体における大局的な構造の違いによって,集束による肺葉の集束を定量化した.その結果,提案した特徴量と集束との間に明確な相関が確認された.これにより,良悪性鑑別の診断支援に対する有効な情報を医師に提供することが可能であると考えられる.さらに,腫瘤の組織型(病変の種類)と特徴量の関係を調査した結果,ある程度の相関が見られ,提案した特徴量を用いることによる組織型の分類の可能性を示した.また,計算機によって腫瘤を2つの型(充実型,および含気型)に分類する手法を開発した.この分類を行うことによって計算機による良悪性鑑別の精度が向上することが確認された.
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