研究概要 |
本研究では遺伝子薬物を感熱性ポリマーであるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)と複合化し、外部からの熱刺激に応答してその薬理効果を可逆的に制御する新しい遺伝子薬剤を開発した。今年度は3',5'両末端アミノ化オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)をビニル化し、これをNIPAAmモノマーとラジカル共重合することによって両末端修飾型複合体を得た。得られた複合体に一本鎖DNA分解酵素であるSlヌクレアーゼを添加し、複合体のヌクレアーゼ耐性を調べたところ、未修飾ODNが酵素の添加と同時に速やかに分解されたのに対して、両末端ポリマー修飾型アンチセンスODNは、120分後においてもヌクレアーゼによる分解を完全に抑制することに成功した。 次に、このポリマー修飾型アンチセンスODNのハイブリダイゼーション能を温度によって制御することを試みた。in vitro転写システムによって、アンチセンス部位の標的配列を含むmRNAを大量合成した。これを複合体の相転移温度の上下で30分間インキュベートし、フリーのRNA量をagilentバイオアナライザーで定量した。この結果、PNIPAAmの相転移温度以下(27℃)でインキュベートした場合、標的RNAはほぼ完全にアンチセンス複合体によって捕捉された。一方、相転移温度以上(37℃)では、90%以上の標的RNAはほぼフリーの状態で存在していることが明らかとなった。これらの実験結果から、複合体のアンチセンス効果はODN近傍のPNIPAAm鎖の状態に依存し、グロビュール状態から緩和されることによって、ODNが標的遺伝子にハイブリダイズできることが示唆された。
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