本研究では、電気インピーダンス法を用いて頸動脈中に飛来する栓子を検出する技術開発のための基礎検討を行っている。今年度は生体頸部電気モデルを製作し、血管モデル内を通過する模擬栓子の検出を試みた。 健常被験者1名のMRI計測によって頸動モデルの構造を皮膚、筋肉、血管、血液の4構造と決定した。皮膚及び筋肉モデルには寒天を、血管モデルには導電性ゴムチューブを、血液モデルには、食塩水を用いた。皮膚、筋肉、血管、血液の導電率はそれぞれ0.2、1.6、1.6、7.0mS/cmとした。モデル寸法を、皮膚厚1.5mm、血管外径11mm、血管内径8mm、皮膚表面から血管中心までの距離は11mmとして20cm角のアクリルケース内に固定し、φ3.5mmの電極を20mm間隔で直線上に4個配置した電極アレイを、血管モデルの真上に位置するように皮膚表面上に設置した。 実験は、φ6mm及び4mmのプラスチックビーズ(模擬栓子)をローラーポンプによって、平均速度117mm/sで血管モデル内を20回通過させ、その際に生じたインピーダンス変化を、開発した高精度インピーダンス測定装置を用いて測定した。(測定周波数:1.25MHz、測定間隔:8.2mS、付加電流:1mAp-p) 実験の結果、φ6mmの模擬栓子を通過させた時には、模擬栓子による明確なインピーダンス変化が認められ、変化した回数と実際の通過回数が一致した。また、電極アレイに対する模擬栓子の位置に対応して得られるインピーダンス変化プロファイルも明確に確認できた。さらに、φ4mmの模擬栓子では直径の違いに応じてインピーダンス変化率が減少した。以上の結果より、電気インピーダンス法によって皮膚表面から血管モデル内を流れる模擬栓子の非侵襲検出が可能であることが分かった。 次年度は、実際の血栓を用いて同様のモデル実験を行い、その検出技術の開発を行う。
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