研究概要 |
吸収性ポリ乳酸を矯正用インプラントとして応用し,さらにBMP(骨形成因子)を吸収性ポリ乳酸表面に複合化する事により,短期間で確実にかつ強固な骨性結合が得られ,加えて生体内で吸収され矯正治療後に撤去の必要がない歯科矯正治療専用の新しい吸収性メッシュ状骨膜下インプラントの開発を本研究の目的とした。 平成14年度の研究実績として,矯正治療の固定源に用いる吸収性インプラントマテリアルとしてポリ乳酸が適当な生体材料であるか検討した.実験動物としてビーグル犬を用いた.まず,骨内に移植可能な場所を確保するためにビーグル犬の上下顎第4小臼歯を抜歯した.この抜歯部の骨性治癒が起こるまで3か月をヒーリング期間としてその後、スクリュー状吸収性ポリ乳酸インプラント単体を専用ドリルを用いて骨内に埋入し,経時的な引っぱり強さを測定した.その結果、植立直後のインプラントの引っ張り強さは15Kgfであり、移植後3か月では7Kgf、6か月では2Kgfと経時的に減少してゆく所見が認められた.現在これらインプラント体の分子量を計測中である.さらに、この吸収性インプラント体を固定源としてコイルスプリングを用い100gfの持続的矯正力を第3小臼歯に付与したところ、矯正力付与後6か月において第3小臼歯は牽引方向に大きく移動していた.また、その際のポリ乳酸インプラントは固定源として安定しており、固定源が移動した所見は認められなかった.これらの結果より、ポリ乳酸は吸収性骨膜下インプラントのマテリアルとしてきわめて有効であることが示唆された.今後はこれらの結果をもとにポリ乳酸の形態を骨膜下インプラントの形状に改良し、BMPとの複合化を進める予定である.
|