研究概要 |
蛋白質を安定かつ大量に内包し、分解に従って徐放する新しい蛋白質製剤用材料としてポリ乳酸(PLA)グラフト化多糖を応用すること目的として,本年度はプルランを用いて調製したPLAグラフト化プルランからの蛋白質内包ミクロスフェア(MS)の調製について検討した。プルランの水酸基の大部分をメキサメチルジシラザンによりトリメチルシリル(TMS)化した後、t-BuOKにより残存水酸基をアルコキシドに変換した。これを開始剤としてL-lactideの開環重合を行い、脱TMS化を経て、PLAグラフト化プルランを得た。得られたPLAグラフト化プルランを用いてW/O/Wエマルション・液中乾燥法により蛋白質内包MSを調製した。モデル蛋白質としてはリゾチーム等を使用した。MSのアルカリによる完全加水分解後の紫外吸収を測定することにより、内包された蛋白質量を定量した。蛋白質内包率をPLAから調製したMSと比較したところ,PLAグラフト化プルランを使用した場合に蛋白質内包率が増大することが確認された。 一方,上記のようなTMS化重合,脱保護というステップではなく,簡便なカップリング(縮合)反応によるPLAグラフト化多糖の合成方法を開発するため,アミノ末端PLAの新規合成および糖質(二糖類,多糖など)との反応についても検討した。その結果,Boc保護されたアミノエタノールのアルコキシドを開始剤としたL-lactideの開環重合により,末端に定量的にアミノ基が導入されたアミノ末端PLAを合成することに成功した。これを用いて,ラクトースなどの二糖類との還元アミノ化反応,およびクロロギ酸パラニトロフェニルを縮合剤とした多糖(プルラン)とのカップリング反応を行い,末端に糖鎖を有するPLAおよびPLAグラフト化プルランを合成することにも成功した。
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