曝露音として25Hzと50Hzの純音の組み合わせを用い、曝露時に体表面に誘起される振動を測定した。測定部位は頭部(額)、左右の胸部、左右の腹部の計5点で、被験者には健康な成人男性を使用した。その結果、31.5Hzと50Hzの純音の組み合わせを用いた昨年度と同様に、二つの体表面振動成分がほぼ独立に、また対応する曝露音の音圧レベルに対してほぼ線型な関係を保って誘起されるという結果を得た。これは、純音を組み合わせた複合低周波音によって誘起される体表面振動の各周波数成分が、独立性や線型性を有していることを示唆するものと考えられた。 また、純音の組み合わせではなく、広帯域の複合低周波音を用いた測定も、予備的な実験として実施した。100Hz以下に帯域を制限したホワイト・ノイズを曝露音とした測定を実施した結果、この場合にも、体表面振動成分に独立性と線型性があることを示唆する結果を得た。まだ詳しい検討は終わっていないが、ホワイト・ノイズのような広帯域の曝露音に対しても、人体が線型な機械的応答をすることを支持する結果と考えられた。 一方、二つの純音を組み合わせた場合の複合低周波音の場合に、体表面振動の振動加速度レベルと被験者の主観的な振動感評価値(各部位ごとの振動感を評価)との相関を調べたところ、胸部や腹部での振動感評価値が、対応する部位での二つの振動成分の振動加速度レベルのパワー和と有意に相関することが示された。これらの結果は、過去の純音を用いた実験の結果と矛盾せず、複合低周波音曝露時に生じる振動感が、体表面に誘起される機械的振動と密接に関係していることが示唆された。
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