研究課題/領域番号 |
13800008
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研究機関 | 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所 |
研究代表者 |
佐野 千絵 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 保存科学部・生物科学研究室, 室長 (40215885)
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研究分担者 |
木川 りか 独立行政法人文化財研究所, 東京文化財研究所・保存科学部, 主任研究官 (40261119)
加藤 信介 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00142240)
岩田 利枝 東海大学, 第二工学部・建築工学科, 教授 (80270627)
青木 睦 国文学研究資料館, 史料館, 助手 (00260000)
山野 勝次 (財)文化財虫害研究所, 常務理事(農学博士)
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キーワード | カビ / モニタリング / 文化財 / 公共空間 / 浮遊菌 |
研究概要 |
本研究は、室内環境で卓越しているCladosporium, Asperugillus, Fusariumなど菌種の挙動を、室内気流解析手法を応用して推定し、最終的に実際の室内空間における真菌類等汚染のメカニズムを解明し、またその結果から、室内環境評価の指標を得るために適した真菌類等汚染調査手法を確立する。得られた成果を応用して、博物館・学校・図書館・ホールなど各種の公共室内空間における真菌類等汚染状況を把握し、清浄な室内空間の指標とできる基準値に関する基礎情報を収集する。上記の薬剤に頼らない防黴法では防ぐことのできない事態が発生することを前提として、殺菌防黴に用いる薬剤に関する基礎研究を行う。 本年度は、(1)モニタリング手法の相互の相関、(2)実態調査、(3)薬剤を用いない制菌手法の検討の観点から行い、下記の成果を得た。 (1)モニタリング手法の相互の相関 携帯型小型サンプラー3種について、繰り返しによる測定誤差や吸引量の安定性、吸引量と捕集真菌量の関係などについて、正確な実測を目指して性能評価を行った。また、培地による捕集効率の変化について検討した。その結果、測定誤差を小さくするためには吸引量の安定が不可欠であり、概して始動直後2分以内の計測はばらつきが大きく、誤差はポンプの安定性に依存していることが明らかになった。 (2)実態調査 本年度は特に、古墳のように屋外環境に近い閉塞空間での浮遊菌量の推移について実測した。結果として、気温の変動に伴い菌の活性度が変化するが、その菌種の多様性は閉塞空間の性質に応じて決定されており、そのバランスがくずれない限り優越種による繁茂は生じないことが明らかになった。 (3)薬剤を用いない制菌手法の検討 壁面含水率分布の推移を検討したところ、カビの繁茂は自由水の有無に強く依存していることが明らかとなった。そのため、水分調整能のある親水性樹脂を遺構面に塗布したところ、含水率分布が安定し、結露のない状態に調整し、最終的にカビ繁殖の速度に影響をあたえることがわかった。 (4)文化財の殺菌防黴チャート編集 得られた成果を公表するために、ポスター形式の普及資料を企画編集した。
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