研究概要 |
単細胞生物である粘菌モジホコリの変形体が、収縮リズムのパタン形成に基づき巨大アメーバ様システムを最適化し、高い計算能力を発揮することを実験的に示し、その数理モデルの可能性を探るべくいくつかのプロトタイプモデルを構成した。 寒天ゲル上を広がる変形体の両端にそれぞれ餌を与えると、変形体の大部分が餌に群がって養分を吸収する一方でたった一本の太い管が二つの餌の間をほぼ最短な経路で結ぶように形成された。 さらに、粘菌の這う空間内のところどころに粘菌の嫌う光をあてておくと、光があたる場所にできる管をなるべく短くするという新たな条件をふまえて、粘菌全体の管の経路が選び出されることがわかった。このように拘束条件が増えても粘菌は管の最適な経路を選択できた。 与える餌の数(3,6,7,12,64個)と配置を様々に変えると、それに応じて餌場所を繋ぐ太い管のネットワークの形も劇的に変わった。これらのネットワークは、効果的な輸送ネットワークの持つべき幾つかの基準を満たした。すなわち、管の総長の短さ、餌場所間の密な繋がり、事故による管の断線に対する耐久性は、いずれも良い値を示した。このような複雑な状況での最適化アルゴリズムは現代科学技術の困難な問題であるが、単細胞の粘菌は予想以上に高い計算能力を有することが解明された。 粘菌の計算アルゴリズムを解明するために、管の形成機構を収縮リズムの観点から数理モデル化の可能性を検討した。管形成には三つの時間スケール、2分の収縮リズムと20分の管形成過程と200分の管ネットワークの再編成過程が存在する。最も基本にある収縮リズムの数理モデルを構成した。 化学振動子と粘菌の原形質流動を表現する偏微分方程式モデルである。これにより往復原形質流動の時空パタンと粘菌の走性を再現できた。
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