研究概要 |
本研究は、心筋系列(cardiac lineage)がいかに決定され、どのようなメカニズムで成熟した心筋に分化し、さらにいかなる機構で終末分化して増殖を停止するのか、これらの点について解明していくことを目的としている。このような心筋細胞の分化の連続的な流れを解析するにはin vitroのシステムの構築が不可欠である。そこで本研究ではまず、胎生初期から心筋に強く発現しているミオシン軽鎖2Vの遺伝子座に相同組み換えによりGFPをノックインしたES細胞ラインを樹立した。このES細胞ライン由来の心筋細胞を用いて我々は心筋系列の決定機構の解明に取り組んできた。ホメオボックス遺伝子Nkx2.5は心臓の初期発生に不可欠な遺伝子であり、その上流に心筋系列を決定する因子があるものと考えられている。しかし、上流10kb,イントロン、下流8kbの検索にも関わらず、major cardiac enhancerはまだ同定されていない。そこで、我々は複数のBACクローンより、現在までに上流50kbまでカバーする約100種のレポーターコンストラクトを作製し、ES細胞由来の培養心筋細胞にトランスフェクションしてその活性を調べた。その結果、in vitroで心筋細胞に強い活性のある領域を6箇所同定した。各フラグメントは既に約100bpまで絞り込まれており、現在トランスジェニックマウスを作製しin vivoでの活性を確認しているところである。(うち3種類については既にFoを得ている。)これらの結果は、ES細胞由来心筋細胞がプロモーター解析のツールとしてたいへん有用であることを示すとともに、心筋系列の決定機構の解明に向けて大きく前進したことを示すものであり、今後さらに、同定したフラグメントの重要箇所をベイトとしたyeast one-hybrid法にて結合する上流蛋白の同定、解析を進めていく予定である。
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