研究概要 |
本研究の目的は、増殖性を獲得した血管平滑筋細胞の収縮性変化の分子機構を明らかにすること、また、増殖性を獲得した血管平滑筋細胞の収縮性が、培養環境(温度、ホルモン、増殖因子の有無、shear stress、各種遺伝子導入)によりどの様に変化するのかを明らかにすることである。本年度の研究により以下の様なことが明らかになった。 1、バキュロウイルスにほ乳動物のプロモーターを挿入し、その下流に種々の遺伝子を組み込んだベクターを作製することに成功した(この実験は、本学の遺伝情報研究施設で行った。)このウイルスを用いることにより、哺乳動物細胞(NIH3T3,ブタ気道平滑筋、ブタ冠動脈平滑筋、ヒト前立腺細胞)に遺伝子導入できることができたが、細胞傷害性が強く、その細胞傷害性の原因を解明することに、時間を要した。この細胞傷害性は、Sf9細胞(昆虫細胞;バキュロウイルスの宿主細胞)に由来する細胞断片に由来することが判明した。この細胞断片を遠心およびフィルターにより取り除くことにより、細胞傷害性なく、高効率に遺伝子導入することに成功した。 2、このベクターを豚冠動脈培養平滑筋細胞に感染、rhoAを発現させた豚冠動脈培養平滑筋細胞を用いて再構成血管標本を作製したところコントロールの2-3倍の収縮力を示した。しかしながら、dominant negative formのrhoAでは、収縮力を抑えることができなかった。 3、そこで、RNA干渉(RNA interference)法を用いて、rhoAをノックダウンした細胞を用いたところ、収縮力を著明に抑制することができた。
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