研究概要 |
エストロゲン添加によりヒト乳癌細胞株にて発現が有意に変動する遺伝子をSerial Analysis of Gene Expression(SAGE)法により複数得た。Northern blotにて、発現変動遺伝子の確認をおこない、既知のエストロゲン応答遺伝子pS2、cathepsin D、high-mobility group protein 1以外に新規エストロゲン応答遺伝子としてWISP-2が得られた。ヒト乳癌細胞株において17βestradio1(E2)によるWISP-2遺伝子の発現誘導は濃度依存的であり、progesterone, dexamethasone, thyroid hormone, 2, 3, 7, 8-TCDDの添加では誘導されず、E2特異的存誘導であった。また代表的な環境エストロゲンであるbisphenol-A(樹脂原料)、nonylphenol(界面活性剤)、DES(合成エストロゲン)、genistein(植物エストロゲン)、daidzein(植物エストロゲン)、zearalenone(マイコエストロゲン)を添加することでも発現が誘導された。またこれらの誘導は、エストロゲン受容体のアンタゴニストであるICI182, 780を同時添加することにより抑制されることから、エストロゲン受容体を介したものであった。次にヒトWISP-2に対するポリクローナル抗体を作成した。この抗体を用いWestern blotをおこなったところ、蛋白レベルでのエストロゲン応答性が確認された。またWISP-2蛋白はMCF-7細胞の全細胞抽出物のみならず培養上清中にも確認され、分泌蛋白であることが明らかとなった。培養上清中におけるWISP-2蛋白の発現量は、72時間まで継時的に増加し、また添加するエストロゲンの濃度依存的に誘導された。
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