[目的] 内分泌かく乱物質は精子数の減少に代表される生殖系への影響のみならず、免疫系や脳神経系に及ぼす影響が懸念されており、高濃度の内分泌かく乱物質は胸腺萎縮に代表される免疫系全体としての機能低下を誘導することが明らかになっている。本研究では、直接的な細胞毒性作用を発揮しない比較的低濃度のトリブチル錫がTh1/Th2バランスにいかなる影響を与えるかをin vitro、in vivo両面から検討し、Th1/Th2インバランス誘導による免疫毒性作用を明らかにする。 [現在までの研究成果] 1 マウス脾臓より精製したナイーブT細胞を0.01-0.1μMのトリブチル錫存在下に種々の抗原提示細胞と抗CD3抗体でプライミングをかけ、6日後の再刺激時のサイトカイン産生パターンを比較したところ、トリブチル錫によりTh2優位性が誘導された。トリブチル錫によるTh2優位性の誘導には抗原提示細胞集団中にB細胞が存在することが必要であり、抗原提示細胞として脾付着性細胞、あるいは骨髄由来の樹状細胞を用いた場合はトリブチル錫によるTh2優位性誘導の作用は弱まった。 2 トリブチル錫により抗原提示細胞集団のIL-12p40発現抑制とIL-10発現増強が誘導され、抗IL-10はトリブチル錫によるTh2優位性誘導を抑制した。 3 30μmole/kgのトリブチル錫の腹腔内投与により、OVA/CFA免疫あるいはN.brasiliensis感染マウスの所属リンパ節細胞はTh2優位性を示した。
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