ラット脳組織ホモジネートから、膜画分および細胞質画分を調製し、ビスフェノールA (BPA)結合能を指標に、BPA受容体の探索を行った。その結果、神経細胞膜画分(P2画分)に高い特異的なBPA結合活性がみられ、この画分にBPA結合タンパク質が存在していることを見いだした。 BPA-sepharose affnityクロマトグラフィーによって、BPA結合タンパク質の単離・精製を試み、SDS-PAGE解析で単一バンドとなるタンパク質の単離・精製に成功した。単離したタンパク質のN末端アミノ酸配列解析を行なったところ、得られたN末端33残基のアミノ酸配列は、Protein Disulfide Isomerase (PDI)と相同性を示した。PDIの全長cDNAをクローニングし大腸菌を用いて、PDIタンパク質(rPDI)を発現させた。 発現PDIタンパク質(rPDI)を用いて、BPA結合活性について検討を行い、PDIがBPA結合活性を有していることが明らかとなり、P2画分でみられたBPA結合タンパク質がPDIであると考えられた。BPAのPDIへの結合は、甲状腺ホルモンのPDIへの結合を競合的に阻害することから、BPAがPDIを介して細胞内の甲状腺ホルモン動態に影響を与えている可能性が考えられた。 また、ラット副腎髄質褐色細胞種由来の樹立細胞株PC12細胞を用いたドパミン放出実験系を確立した。BPAをPC12細胞への短期曝露させると、PC12細胞内のドパミンがBPA濃度依存的に放出される事が明らかとなり、この検出系は、BPAの神経作用の簡便なin vitro検出系として有用であると考えられた。
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