内分泌撹乱物質とよばれる化学物質については、様々なレベルでの研究がなされつつあるが、分子レベルでの作用メカニズムが明らかになったものは非常に少ない。こうした中で、いくつかの化学物質については、エストロジェン受容体への結合が報告されているが、その結合は一般に非常に弱く内分泌撹乱の広範な影響を解明するための明確な証拠はない。そこで本研究では、内分泌撹乱物質の真のターゲットとなる生体分子を明らかにし、その機能の解析を行うことを目的として研究を行った。 我々がすでに開発したアフィニティー精製用のラテックス粒子に内分泌撹乱物質を共有結合させ、この粒子に結合する生体分子の精製を行った。モデルとしてラテックス粒子に結合した化学物質は、フタル酸、ノニルフェノールや農薬を基本骨格とする化学物質の誘導体である。ヒト子宮頚ガン由来の細胞の抽出液から、これらのアフィニティーラテックス粒子に結合する因子を精製し、そのアミノ酸配列から内分泌撹乱物質に結合する生体分子の同定を行った。 さらにこの情報から遺伝子のクローニングを行い、その遺伝子産物を発現させる系を構築した。これらの遺伝子産物と内分泌撹乱物質の結合を確認しその結合領域を決定するために、部分的な領域を欠損した一連の変異遺伝子を作製し、結合に必要な領域などについて詳細な解析を行った。精製されてきた生体分子(遺伝子)は、固定化した化学物質により異なることから、それぞれの生体分子(遺伝子)に対する評価系を培養細胞やマウスなどを使って構築し、遺伝子の機能解析を進めている。
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