研究課題/領域番号 |
13834001
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鯰越 溢弘 新潟大学, 法学部, 教授 (80037085)
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研究分担者 |
岡上 雅美 新潟大学, 法学部, 助教授 (00233304)
丹羽 正夫 新潟大学, 法学部, 教授 (40218251)
小野坂 弘 新潟大学, 法学部, 教授 (60018108)
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キーワード | 少年法 / 修復的司法 / 少年犯罪 / 被害者学 |
研究概要 |
今年度においては、わが国における「関係修復的少年司法システム」の構築可能性を論ずる前提作業として、各人が自己の分担する領域につき少年司法を取り巻く内外の間題状況の把握・分析を行った。まず小野坂は、非行原因論の見地から、文献ならびに実務家に対する聞き取りを通じて、わが国における近時の少年非行の質的変化を検討した。非行原因については未だ解明が困難な点も多いものの、上記の「質的変化」との関連では、近時のわが国の社会文化的な基盤の変容がここでは重要な役割を果たしていることがひとまず明らかとなった。諸外国で行われている、非行少年と被害者および地域社会を直接対話させることによる「関係修復的」司法の実態に関しては、丹羽がチューリヒ大学法学部(スイス)で情報収集ならびに研究者との意見交換を行い、ヨーロッパにおいても「関係修復的」な間題解決への志向が一段と強まっていることを確認した。これに対して、同年代の少年が非行少年を立ち直らせる試みとして注目されるアメリカの「ティーン・コート」に関しては、鯰越が検討を行い、同年代の少年たちが共感をもって事実認定を行う点で特別予防的にも望ましい結果が得られる反面、手続法的にはいくつかの問題点が存在し、こうしたモデルの導入にはなお困難な面もみられることが判り明した。さらに、わが国における非行予防・矯正プログラムの実態と問題点に関しては、岡上が小野坂の助力も得ながら再検討を行い、わが国における制度の問題点として、被害者保護や、少年自身の規範意識の覚醒・強化といった面に十分な配慮がなされていないことが、あらためて確認された。上記のような問題状況からすれば、「関係修復的」な問題解決モデルは、わが国においてもその導入が真剣に検討されてよいものと思われる。次年度はかかる観点から、主として同モデルのわが国への導入可能性につき総合的な検討を行う予定である。
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