研究概要 |
思春期の不登校・家庭内暴力・ひきこもりを呈する子どもたち(N群)と思春期の怠学・非行(D群)とは,臨床的にその精神病理が相違すると思われた。そのため親への暴言・暴力,規則正しい生活ができないなどの部分症状に類似する点はあるものの,両者は別物として対応する必要があると推測される。本研究では,治療ならびにケアの点でニーズの異る両群の精神病理の差を客観化することを目的として,両群の母親並びに正常発達を遂げている同年齢の子どもの母親33名を対象として,Attachment Style Interview(ASI)を施行した。なお,本人を対象としなかったのは,両群とも本人が来談することは殆ど期待できないためである。東京都立中部総合精神保健福祉センター思春期デイケア親プログラムに参加した母親で,臨床研究の説明と合意を得た対象29名にASIを施行してstandard, non-standard stylesに分類した。更に,non-standardをenmeshed, dismissive, fearful, withdrawnの4種類に下位分類して,これら2種以上のサブタイプの混在する場合をdisorganized typeとした。N群とD群の分類は,初回面接およびその後半年以上の子どもの経過に基づいて臨床的に判断した。なお,ASIを施行する面接者はこの判断に対してblindである。N群の母親のアタッチメントはStandard9名,non-standard14名,D群では2名,4名であり,両群に差は認められなかった。しかし,disorganizedタイプのアタッチメントはD群に多かった(x^2イエーツ補正P=0.026)。N群およびD群のアタッチメントは,non-standardタイプが正常群の母親(standard31名,non-standard2名)と比べて有意に多かった(Fisher, P<0.00001)。D群の母親にdisorganizedタイプのアタッチメントが多い事は,D群の子どもには幼児期児童期を通じて養育環境を補正する地域子育て支援ニーズの高いことを示唆する。
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