1.多流路多段階エネルギー伝達カスケードの構築:微小管上のエネルギー伝達カスケード終端で、伝達されたエネルギーによる電子移動を確認した。また、この電子移動流路はメチルビオロゲンやキノンにより「分岐」することができた。一方、微小管上に酵素を集積すると、物質の拡散輸送を介した反応カスケードが成立することも確認した。今後は、酵素を含む種々の機能分子の微小管上への集積と、エネルギー流路の多様化(多流路化・多段階化)によるシステム形成を試みる予定である。 2.タバコモザイクウイルスを核とした複合化集積システムの構築:タバコモザイクウイルスのもつ円筒構造の内部に特異的に色素を吸着させることができた。現在、金属クラスターや蛋白質などを複合化したナノサイズの「ストレッジ」の構築を検討している。 3.チューブリンと酵素の複合化方法の検討:共有結合やアビジン-ビオチン結合を利用する複合化が微小管を傷つけることがこれまでに分かった。そこで、微小管表面に負に帯電したアミノ酸残基が多いことに着目し、正に帯電したアミノ酸残基を表面に多くもつチトクロムCを微小管と混合したところ、両者が静電的に結合することが分かった。このことから、今後は静電的相互作用を利用して機能分子を集積する方法を取り入れていくこととした。 4.天然の複合化集積システムの解明:光合成系での機能分子の集積メカニズムを検討した。光合成で中心的役割を果たすクロロフィルのπ共役系平面には面不斉がある。このπ共役系の中心にあるMgがいずれの面から配位子(アミノ酸残基)を近づけ易いのか、従来まったく議論されてこなかった。本研究では、これまでに解明された蛋白質結晶の構造調査とMMおよびMO計算から、配位を受けやすい面を初めて特定し、蛋白質との複合化のされ方と機能との関係について考察した。この成果は論文として公表した。
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