研究概要 |
本研究では、生物が行っている再帰的な機能に習うことによる再帰的なフォトクロミック過程を利用した完全に受動的なパルス発生機構の実現を目的としている。この機構を実現するための最適なフォトクロミック材料の条件の検討を通して、自己誘導型光パルス発生デバイスの実現を目指す。本研究の基本的なアイディアである、再帰的なフォトクロミック過程による自己誘導型光パルス発生の原理の検討を行う。本年度は、最終年度であるため、特に、昨年度までに得られた再帰的なフォトクロミック過程の検証実験の知見から、再帰的なフォトクロミック過程を効率的に利用可能なデバイスの検討を行った。本年度の研究により得られた成果・知見は次の通りである。 1.安定な再帰的なフォトクロミック過程の実現:昨年度までに検討を行った膜タンパク質の一種であるバクテリオロドプシンの再帰的なフォトクロミック過程に関する研究をさらに進め、バクテリオロドプシンの再帰的なフォトクロミック過程の安定化を検討し,安定化の条件として照射光強度比の重要性を確認した。 2.再帰的なフォトクロミック過程を利用したデバイスの検討 提案するパルス発生の機能の利用を目的として、バクテリオロドプシンのミリ秒の過程を持つフォトクロミック過程について、デバイス化の検討を行う。再帰的なフォトクロミック過程を一種のメモリ過程として捉えることにより,これまで光通信の分野で切望されてきた光ランダムアクセスメモリデバイスへの応用を検討した。超高速光信号に対して瞬時に反応し,フォトクロミック過程の進行中をバッファ時間とすることにより,超高速光信号に対する光ランダムアクセスメモリとして機能することを,ピコ秒の光パルスを用いた実験により確認した。
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