研究概要 |
本研究の目的は,21世紀の高度情報通信社会で爆発的に高まると予想される,超短光パルスへの需要に対応するため,その発生および制御の新しい手法の確立を目指すことである.特に,電気的な変調やモードロック技術を用いた能動的なアプローチではなく、生物が行っている再帰的な機能に習うことによる再帰的なフォトクロミック過程を利用することにより、二色の連続発振光の入力に対して自己誘導的に光パルスを出力する完全に受動的な機構の実現を目的とする. 膜タンパク質の一種であるバクテリオロドプシンを用いた実験により,再帰的なフォトクロミック過程からの振動光の発生を確認した,また、バクテリオロドプシンの持つ様々なフォトクロミック過程の選択的利用を実現するために、各状態での光吸収の時間的な特性に間する基礎データの獲得を行った。その結果、常温での各状態における光吸収の可能性を確認した。さらに提案するパルス発生の機能の利用を目的として、バクテリオロドプシンのミリ秒の過程を持つフォトクロミック過程について、デバイス化の検討を行った。再帰的なフォトクロミック過程を一種のメモリ過程として捉えることにより,これまで光通信の分野で切望されてきた光ランダムアクセスメモリデバイスへの応用を検討した。超高速光信号に対して瞬時に反応し,フォトクロミック過程の進行中をバッファ時間とすることにより,超高速光信号に対する光ランダムアクセスメモリとして機能することを,ピコ秒の光パルスを用いた実験により確認した。 本研究で得られた研究成果は,従来の電気的な強制変調の高速化ではなく,フォトクロミック有機材料の持つ利点を生かすことにより,新しい光デバイスの開発に対してきわめて有益な指針を与えるものと思われる.
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