研究概要 |
本年度は申請した研究実施計画に従い,多孔質Si層の物性制御および有機EL素子の高輝度化を進めると共に,有機・無機モノリシック基本構造における積層界面の観察とキャリア注入特性を調べた。その結果,光照射陽極化成法により形成した多孔質Si層からピーク波長550〜750nmの可視発光を観察し,化成時間と光照射強度に依存して禁止帯幅を1.6〜2.3eVの範囲で制御できることが分った。また,有機層にはポリビニルカルバゾールを母体とし,アルミキノリール錯体とトリフェニルジアミンをキャリア輸送層とした分子分散構造を採用し,単膜構成でありながら輝度10000cd/m^2,発光効率1-1m/W以上の緑色発光を実現した。 多孔質Si層上に有機膜を積層化する際の課題として,(1)si表面の平坦性低下,(2)Si基板からのキャリア注入効率の低下が認められた。前者の対策として,ポーラスSi粒子径を5mm以下まで小さくしたところ,従来のガラス基板/透明電極表面の凹凸と遜色のないレベルまで改善できることを高分解電子顕微鏡観察で確認した。また,後者の課題に対してはポーラスSi層の禁止帯幅Egを1.7eV以上とすることが有効であり,Egを2.2eVまで広げることで,有機・無機複合素子から初めて,輝度100cd/m^2以上の発光を観察した。 本年度の研究成果は(1)単層ポリマーEL素子において高輝度を実現したこと,(2)ポーラスSi層がホール・ブロッキング作用を示し,キャリア注入特性の改善には禁止帯幅制御が極めて有効な方法であることを見出したことである。複合素子の発光特性はまだ実用に十分ではないが,改善策として,(1)ポーラスSi層の更なる微粒子化,(2)電子注入バッファ層の導入が有効であり,引き続き来年度に検討する。その他,薄膜構造の光伝播解析,有機層の耐熱性改善など,来年度に繋げる要素技術の開発にも進展が認められた。
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