Hydrogenovibrio marinusの膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)で特徴的に見られたIle残基をRalstonia eutropha由来MBHに導入し、膜画分での解析を行ったところ、サブユニット構造や活性中心の構造安定性に関与することが示された。平成15年度はM1〜M5変異型MBHの精製酵素での解析を試みた。菌体を超音波破砕後、細胞膜画分を調製し、1%TritonX-100存在下での可溶化を行った。超遠心分離後の上清をQ-Sepharose High PerformanceおよびHydroxyapatiteカラムに供し、精製が達成された。精製酵素においても膜画分と同様の安定化効果が確認され、さらに興味深いことに顕著な安定化効果の見られたMBHでは比活性の上昇が観察された。また、M1〜M5変異を組み合わせた多重変異型MBHを作成し、膜画分での解析を行ったが、単純な変異の組み合わせでは期待される相乗的効果は得られなかった。 変異部位の構造を詳細に推測するため、Desulfovibrio vulgarisの[NiFe]型ヒドロゲナーゼの結晶構造に基づいてホモロジー・モデルを作成した。変異導入部位に相当する残基はいずれも活性中心から14Å〜35Å程度離れており、活性中心の構造に直接的な影響は与えないと思われた。H.marinusとR.eutrophaのMBHの構造は非常に類似しているが、変異導入部位周辺のキャビティはH.marinus HBHの方が小さいという傾向があった。興味深いことにH.marinusのHoxG内部には疎水的なIle残基が多く集まり、いわばIle-クラスターを形成していることがわかった。このようなIle-クラスターをR.eutropha MBHに導入した場合の効果に興味がもたれた。
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