本研究では、米ぬかなどの農産廃棄物を糖化して得られるすべての糖源から生分解性プラスチックの原料として注目を集めているL-乳酸を効率よく生産することを目的とした。 本年度において得られた成果は、以下のようにまとめられる。 1.脱脂米ぬかを加水分解するための最適な条件は、pHが5.0、アミラーゼとセルラーゼの添加割合が2:1、酵素濃度は10mg/Lであった。この条件で加水分解反応を行った結果、100gの脱脂米ぬかから、加熱殺菌処理を行った場合には約44.5g、未処理の場合には約36.8gの全糖を得ることができた。 2.脱脂米ぬかの糖化反応と乳酸菌による乳酸発酵を同時に行う同時糖化発酵を行った。MRS培地に脱脂米ぬかを懸濁して加熱殺菌処理した後、除菌した酵素を添加し、最後に乳酸菌を植菌することによって発酵を開始した。また乳酸菌として、L-乳酸をおもに生産するLactobacillus rhamnosus KY-3を用いた。この同時糖化発酵において得られた乳酸濃度は、pHを6.8に制御した培養において22.1g/L、pH5.0に制御した培養においては25.4g/Lとなった。 3.未殺菌の脱脂米ぬかを用いた同時糖化発酵を行った結果、pHを6.8に制御した培養においては、L.rhamnosus以外に、米ぬかに内在する微生物が増殖したため、酢酸やギ酸が多く生産され、得られた乳酸濃度は低い値となった。しかし、pHを4.5に制御した培養において、米ぬか内在菌の生育をほとんど抑制することができ、L.rhamnosusを選択的に増殖させることができた。その結果、100g/Lの脱脂米ぬかから、比較的光学純度の高い、約30g/LのL-乳酸を得ることができた。
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