研究概要 |
好熱性細菌Thermophilic bacterium PS-3由来の無機ピロフォスファターゼのSer-89(S)をGly(G),Ala(A),Thr(T),Glu(D),Asp(E)に変換し、本残基の酵素タンパクの耐熱性への寄与を検討した。S89G,S89A,S89Tは触媒活性の減少を示したが、野生株と同様70℃までしか熱安定性を示さないがS89D,S89Eは酵素活性の上昇と熱安定性(80℃、1時間)の上昇を示した。80℃、1時間加熱後のS89G,S89Aは6量体と3量体の混合物であり、S89Tは6量体、3量体、単量体の混合物であったが、S89D,S89Eは6量体のみであった。次に、同酵素中に含まれる10個のPro(P)残基をAlaに変えた変異酵素を作製しその耐熱性を調べた。変異導入によりP116A以外は70℃,1時間の加熱で3量体あるいは3量体と6量体の混合物に変化し、熱安定性が減少したが、P116Aは6量体であり、熱安定性に変化はなかった。以上のことより、本酵素の熱安定性には、サブユニット-サブユニット間相互作用が大きく寄与していると結論した。一方、我々は、好熱性細菌酵素と比較のために枯草菌酵素を研究している最中に、枯草菌酵素が1次構造および高次構造からも、活性発現にマンガンイオンを必要とする点からも、今まで知られている酵素と全く異なることを見出したが、本研究でその流体力学的特性明らかにし、さらに、遺伝子工学的手法を用いて活性中心に関与するアミノ酸残基の同定を行い、Arg-295,Lys-296が活性発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、Lys-297をArgに変化させると酵素活性が3倍上昇することを見出し、現在その原因を検討している。
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