研究概要 |
遺伝子工学的、タンパク質化学的、酵素学的手法を用いて、本研究により次のことを明らかにした 1)Family II PPase無機ピロフォスファターゼ(PPase)13種類に共通して存在するKKR配列(枯草菌PPaseでは295Kから297R)前2者のKKは触媒活性中心、特に基質認識に重要であることを明らかにした。また、3番目のRは基質が通過する通路の大きさを整えていると推定された。 2)Family II PPaseは2量体で存在し、サブユニットあたりマンガンイオン3分子が配位していることを明らかにした。 3)枯草菌PPaseの2つのドメイン(1-187、193-323)を結ぶヒンジ領域は機能発現に重要であり、189Gはその中でも特に重要な機能を有している。 4)Family I PPaseに属する好熱菌PPaseの12個のプロリン残基のうち外部環境接触面に存在するものは機能発現に何の影響ももっていないが、その他の残基はサブユニット間相互作用に多かれ少なかれ影響を有する。特に72番目のプロリンは6量体形成に決定的役割をもっており、その変異体は単量体でしか存在できない。 5)酵素タンパク質の安定性・有機溶剤耐性はタンパク分子の(1)外部親水性、(2)内部疎水性と充填性、(3)ヘリックス安定性、(4)サブユニット間相互作用に依存している。大腸菌PPaseの一次構造と、その一次構造が類似している7種の好熱菌PPaseの一次構造と比較し、7種の好熱菌PPaseに共通して保存されているが大腸菌PPaseでは異なっているアミノ酸残基を好熱菌型に置換し、タンパク質の安定化、有機溶剤耐性化向上を目指す事をめざした。 現在までF40K,Y57I,P74I,Q80L,S111Eの変異体を作製し、疎水クロマトグラフィーにより電気泳動的に単一な標品を得た。これら標品について酵素学的特性と、変異導入によるタンパクの高次構造に及ぼす影響を現在検討している
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