未利用セルロース系バイオマスからの生物燃料直接発酵菌の代謝工学的育種

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13836007
• 研究機関: 鳥取大学
• 研究代表者: 簗瀬 英司 鳥取大学, 工学部, 教授 (20158033)
• 研究分担者: 岡本 賢治 鳥取大学, 工学部, 助教授 (80283969)
• キーワード: バイオマス / バイオ燃料 / エタノール / ヘミセルロース / 代謝工学 / キシロース / キシロースイソメラー / ザイモモナス

研究概要

森林間伐材、建築廃材、稲藁・籾殻、および古紙・廃紙、などの未利用バイオマス資源のエネルギー源としての利用は、地球規模でのCO_2バランスを崩さないことから「カーボンニュートラル」とされ、温室効果ガス削減に貢献するエネルギーとして大いに期待されている。既に、経済産業省と環境省は温暖化対策として、2008年からは現行のレギュラーガソリンをエタノールを10%添加したガソリン(E10)に置き換える方針を提示している。本研究は、未利用のセルロース系バイオマス資源からバイオ燃料としてのエタノールを製造し、製造したバイオエタノールをガソリン添加用含酸素化合物や化成品合成原料として、さらには地域の熱源および電力源として利用することを目的として、セルロース系バイオマスを高効率でエタノールに変換する発酵菌の分子育種を行った。
建築廃材や森林間伐材の主要な構成成分は、セルロースとヘミセルロースであるが、これらセルロースやヘミセルロースを直接分解・発酵してエタノールを生産する微生物は自然界には存在しない。本研究では、木質系バイオマスの酸処理糖化液中に混在するヘミセルロース成分を高効率でバイオエタノールに変換できる新規な発酵菌を創製した。
1)廃木材の酸処理糖化液中にセルロース部分分解物であるセロオリゴ糖とともにヘミセルロースに由来するキシロースの混在を認めた。
2)高速度エタノール発酵菌であるザイモモナスにキシロース発酵性を付与するために、大腸菌由来キシロース代謝系の4種の酵素遺伝子をクローニングした。
3)大腸菌由来キシロース代謝系酵素遺伝子をザイモモナス菌へ形質転換法により導入して、ザイモモナス細胞内でのキシロース代謝酵素遺伝子発現に成功した。
4)組換えザイモモナス菌に新たにキシロースからエタノールを理論収率で生産させることに成功した。
未利用セルロース系バイオマス資源から効率よくエタノールを生産させるためには、バイオマスの酸処理糖化液にブドウ糖とともに混在するセルロース部分分解物やキシロースをエタノールへと変換可能な発酵菌の育種が不可欠であった。本研究成果は、平成13年度に実施した研究成果と合わせることにより、糖化液に含まれる主要な3種の糖質をエタノールに変換することを可能にした。すなわち、我が国において年間5千万t排出されるセルロース系産業廃棄物をエタノールに効率よく変換でき、国内ガソリン需要の17%をエタノール燃料に代替することが可能になった。

研究成果

• [文献書誌] K.Okamoto, Y.Ito, I.Shigematsu, S.O.Yanagi, H.Yanase: "Cloning and characterization of a laccase gene from the white-rot basidiomycete Pleurotus ostreatus."Mycosicience. 44(1). 11-17 (2003)
• [文献書誌] K.Okamoto, M.Izawa, H.Yanase: "Isolation and application of a styrene-degrading strain of Pseudomonas putida to biofiltration"J.Biosci.Bioeng.. 9(6). 633-636 (2003)
• [文献書誌] H.Yanase, K.Okamoto, K.Nozaki, K.Nishida: "Ethanol production from cellulosic materials by the genetically engineered Zymomonas mobilis."11^<th> European Congress on Biotechnology, Abstract Book. 113 (2003)
• [文献書誌] 分担執筆:簗瀬英司: "農芸化学の事典"朝倉書店. 869 (2003)