Bacillus thuringiensisが産生する双翅目昆虫特異的殺虫蛋白質の一つであるCry11Aのプロトキシン(70kDa)のプロセシング過程を調べた。70kDaプロトキシンをトリプシンで消化すると、36kDaと32kDa断片が生成した。アカイエカ幼虫(ボウフラ)の中腸抽出液で処理した場合にも類似の結果が得られた。生じたポリペプチド断片のN末端領域のアミノ酸配列を解析し、36kDa断片のN末端アミノ酸はSer10であり、32kDa断片のN末端アミノ酸はAsp361である事を明らかにし、両断片が70kDaプロトキシンの分子内切断により生成することを示した。さらにこれら二つの断片はゲルろ過及びイオン交換クロマトグラフィーにおいて同一画分に溶出されたこと、及び後述の融合蛋白質GST11A-36kと32k-Hisが会合体を形成することに基づき、ヘテロ二量体を形成することが実証された。36kDaと32kPa断片からなる複合体はBBMV結合能を有し、またボウフラに対する十分な殺虫活性を保持していたことからCry11Aの可能な活性型分子の一つの形態であることが強く示唆された。36kDaと32kDaの各断片からなる融合蛋白質GST11A-36k、GST11A-32k及び32k-Hisを作成した。GST11A-36kとGST11A-32kは、それぞれ単独ではボウフラに対する殺虫活性を持たないことが明らかとなり、36kDaと32kDaのヘテロ二量体形成によって殺虫活性が発現することが強く示唆された。さらに、ボウフラBBMVにCry11A特異的結合蛋白質の存在を明らかにし、またもう一つの双翅目特異的殺虫蛋白質であるCry4Aとは標的細胞上の結合部位を共有していない事を示唆した。以上の研究成果によって、Cry11AがCry4Aとは異なる新しい作用過程を有することが明らかとなった。
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