研究課題/領域番号 |
13837002
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研究機関 | 川村学園女子大学 |
研究代表者 |
若桑 みどり 川村学園女子大学, 人間文化学部, 教授 (30015234)
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研究分担者 |
栗田 禎子 千葉大学, 文学部, 助教授 (10225261)
池田 忍 千葉大学, 文学部, 助教授 (90272286)
川端 香男里 川村学園女子大学, 人間文化学部, 教授 (50000592)
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キーワード | ポストコロニアル / イスラーム / タリバン / ブルカ / 民族衣裳 / ナショナリズム / 文化帝国主義 / 近代化 |
研究概要 |
本研究が着手された2001年秋、ニューヨークの世界貿易センターへの自爆テロをきっかけとしてアメリカを中心とする反タリバン攻撃が開始されたが、これと同時に、タリバン政権の女性抑圧、とくにアフガン女性のヒジャーブ(頭被い)をタリバンの非人道的な女性抑圧と後進性のシンボルとして宣伝する言説が世界に流布した。それはアフガンにとどまらず、キリスト教・白人側の・イスラム教・有色人種の後進性・非近代性へと拡大された。これは本研究の目的であった、女性表象のポストコロニアル的開明に格好の現在進行的サンプルであった。このため研究グループはアフガン女性の頭被い即ちブルカをテーマとして、いわゆる非白人社会における女性の「民族衣装」をめぐる相反する意味決定に焦点をあてて研究と討議を行った。まずイスラーム担当の栗田が、ブルカを女性抑圧の象徴としてみる欧米の「文化帝国主義」に対して、イスラーム世界はこれを「伝統的文化」あるいは「民族的アイデンテイテイー」とすることを指摘したが、しかし、実は、現行のブルカは19世紀以前には固定しておらず、イスラムの教義から導き出されたものというよりは、商業資本の成長、国内市場の統一、繊維産業の発展という「近代化」とむすびついたすぐれて近代的な現象であることを、19世紀の旅行記および地誌著作者の史料によって証明しうるという結論に達した。いっぽう若桑は、明治の日本が近代国家を形成するにあたって、近代化のシンボルとして明治16年に皇后をはじめとする宮中・貴族女性の「洋装化」を断行したが、日清・日露以降は皇后・貴族女性とも和装に回帰し、その後は和洋一重服装を維持しつづけたことを指摘し、洋装によってはみずからをアジアの後進性からの脱却のシンボルとして機能せしめ、和装によって西洋への民族的アイデンテイテイーの象徴として機能せしめたことを指摘し、日本女性の重服制が中心である西欧への追随と国家主義との二重性によって構成される近代日本を表象するものであるとした。インド、韓国におけるサリー、チョゴリの着用もまた伝統の名のもとに近代国民国家の西欧への対抗的な民族性の近代的創出であったと結論した。これ以降の調査と考察は次年度に持ち越される。
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