研究課題/領域番号 |
13837003
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
新田 啓子 東京学芸大学, 教育学部・第一部・言語文学第二学科・文部科学教官 講師 (40323737)
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研究分担者 |
近藤 弘幸 東京学芸大学, 教育学部, 文部科学教官 講師 (00302901)
舌津 智之 東京学芸大学, 教育学部, 文部科学教官 助教授 (40262216)
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キーワード | 聴覚 / ジェンダー / 大衆音楽 / 黒人 / ブルース / ラップ・ミュージック / 性暴力 / 初期近代 |
研究概要 |
本研究の目的は、文化作品におけるジェンダー観念の表象分析に「聴覚」という新たな分析軸の導入をはかることにより、性をめぐる「権力」が微妙に流動するパターンを明らかにしようとするものであるが、平成13年度は主に、各々が研究対象とする地域における現地調査、および聴覚資料の分析・概念構築に当てられた。とはいえ、共同研究者全員が、その過程において得た知見を特定の文学表象・文化作品解釈に応用し、各論として発表する機会を得た。 新田啓子は、日本ではいまだ試みられたことのない「女性ラップ・ミュージック」という、ヒップホップ文化におけるサブ・ジャンルが形成される過程をまとめ、その政治性および、社会的受容における諸問題を考察した(雑誌論文成果)。同時に、研究対象となった楽曲をテクストとして見た際、そこには性をめぐる覇権的な知がどのように表象されているかという点や、創作者/演技者は、それをどのように女性の「性的経験」として言説化しているのかという点に対する詳細な分析を行った。舌津智之は、米国テキサス大学、UCLA、サンフランシスコ公立図書館において、ジェンダー/セクシュアリティ概念が、表象論や社会構成論と切り結ぶ契機を考察するために有用な関連書物を、閲覧・収集した。一方で、こうした研究の成果を手掛かりに、日米の(大衆)音楽文化の諸相を調査し、近刊のブルース論集における論文としてまとめた(図書共著論文成果1)。近藤弘幸は、「結婚」という自然化された習俗が、実は性暴力を隠蔽する表象として働き得るという命題をシェイクスピア作品の中に見い出しつつ、それをつとに探究した(図書共著論文成果2)。その議論において特に丹念に分析されたのは、「結婚」という選択に向かう女性主人公が、それを望んだり批判したりすることを通して「主体化」する過程であり、同成果では、その複雑性と文化的意義の両方が明らかにされた。
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