研究課題/領域番号 |
13837003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
新田 啓子 東京学芸大学, 教育学部・第一部, 助教授 (40323737)
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研究分担者 |
近藤 弘幸 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (00302901)
舌津 智之 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40262216)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 聴覚 / ジェンダー / 大衆音楽 / ブルース / ラップ・ミュージック / ウィリアム・シェイクスピア / 黒人 / 初期近代 |
研究概要 |
本研究における平成14年度の目的は、各共同研究者が研究対象に選ぶ地域に赴いての基礎調査を踏まえ、聴覚テクストの審美的要素と政治的要素がいかに絡み合っているか、その点の分析を進めることであった。各々が、その過程で得た知見を応用し、特定の文学表象・文化作品研究としての論考を、学術専門誌上で、あるいは著書の形で出版した。今年度は本研究の最終年度である。したがって、我々は、そうした論文をさらに発展・改稿し、研究成果報告書に上梓した。 新田啓子はラップ・ミュージックにおけるひとつの言説上のねじれを、人種とジェンダーの視点から解きほぐし、ヒップホップ文化が暗示するグローバリゼーションの二面性、並びに大衆文化における合衆国政治言説の影響力の大きさを検証した。ここで分析対象となったのはラップにおける「紛争」の言説である。そこでは、合衆国主流政治文化が隠蔽しながら深く関わる二つの地下市場(武器・麻薬売買)が、合衆国都市部の貧困経験の物語として回帰していることが分析された。同時に舌津智之は、ブルース音楽における聴覚的越境を考察した。舌津はとりわけ、アメリカ黒人音楽と目されるブルースの生成に、スイスとハワイが関わった事実に注目し、従来のブルース批評の盲点を指摘した。これは、合衆国に独占された観のある20世紀大衆音楽を再定義し、音楽的ナショナリズムを脱構築するような成果となった。一方で近藤弘幸は、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『終わりよければすべてよし』を取り上げて、初期近代イングランドにおける女性の主体形成と沈黙の関わりを考察した。近藤は、この戯曲の女性主人公が、沈黙の中で巧みに立ち回り、自らの居場所を確保していることを指摘しつつ、沈黙もまた、発話に勝るとも劣らない女性の自己表現手段であったことを検証した。
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