研究概要 |
本研究は,労働組織における男女の不平等な処遇条件の根本条件をジェンダー間の性別職務分離に見いだし,これを変革する上で人事政策の役割に注目している。職務分離の固定化状態を除去する上での人事政策の影響力を実証的に解明するために,まず,女性労働への依存度が高い小売業のケーススタディを実施し,そこでのジェンダー間職務分離のメカニズムと労働組織における多様な分離メカニズムを解明した。具体的には百貨店と総合スーパーを事例としてとりあげ,上からの人事方針やマネジメントが組織のボトムにまで影響を及ぼすのを阻止している重要な要因が組織内分離であることを明らかにした。第二に,女性店長の登用を中心とする女性活用を積極的に推進する総合スーパーの事例をとりあげ,女性店長と男性店長のマネジメントと組織内分離との関係について考察し,女性店長がある程度成功をおさめた理由として分離をのりこえてボトムに働きかけていくマネジメントのあり方が確認された。こうした事実発見から逆に,女性労働への依存率の高いこうしたケースにおいてさえ,これまでの人事管理の実践が男性中心主義的に組み立てられてきたことを確認することができる。また人事管理に携わる人々へのインタビューを通じてもまた,彼らがステレオタイピングなジェンダー観にたっていることが明らかになった。本研究は,こうした人事管理のあり方が,組織に非効率生の原因になっているのではないかという点を実証的に問題提起し,ポジティブ・アクションのもつ可能性を明らかにしている。
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