研究概要 |
本研究は,法定相続人以外の家族,特に嫁による介護提供に対して何らかの法・経済的配慮を行うことの合理性・可能性について,法律学・経済学や国際比較を通して多面的な観点から検討を加えようとするものである。 平成13年度は研究期間の初年度である。本年は,法律学に関する基礎知識を確実なものにする目的で,相続,介護に関連した国内外の文献を広く読み込んだ。日本に関する具体的なテーマは次の2点である。(1)扶養(介護)と相続に関する法の史的展開の把握(とりわけ,女性の法的地位の変遷):「家」制度の廃止と家族の変容,無能力者から能力者となった女性の扱いの過程,(2)1980年の二大民法改正の論点整理:配偶者の法定相続分の引き上げ(民法900条)と「寄与分」創設(民法904条の2)。議事録,覚書などを中心に,審議経過,論点整理や関連する判例の整理を行った。法定相続分の引き上げ根拠は主として家族形態の縮小化であること,寄与分創設の直接的な契機は農業・自営業世帯の経済的救済であること,同時に一部識者から嫁も同様に取り扱ってはどうかとする議論も提起されたが注目されなかったこと,などが明らかになった。 他方,諸外国(アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ)については現行法を中心に,扶養(介護)と相続に関して読み込み・整理を行った。配偶者の両親に対する扶養義務も明文化しているフランス,介護労働をpaid workと見なすドイツなど,わが国が参考にすべき点は多い。一部,中国,台湾とシンガポールについて試験的な検討も行った。 来年度は,全国ベースで介護と相続に関するアンケート調査を実施する。アジア地区の海外研究者の協力が得られれば,国際比較も可能となる(折衝中)。
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