研究概要 |
本研究は,法定相続人以外の家族,特に嫁による介護提供に対して何らかの法経済的配慮を行うことの合理性・可能性について多方面から検討を加えようとするものである。昨年度は法律・経済関係の先行研究の読み込みを行った。中間年度である今年度は,それら知識も加味したアンケート調査を設計し,東京都と長野県で調査を実施した。東京都調査は,(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS)の協力を得てNACS経由で実施(配布枚数150枚,現在回収中,高橋担当)。他方,長野県は老人大学に参加した中高年・高齢者を対象に案施。すでに108枚,回収している(角尾担当)。なお,東京都調査と長野県調査では介護に関する地域性,介護労働への関与のあり方,とりわけ嫁の介護労働への頻度・周囲からの無意識の期待・圧力などの周辺事情の違いから,一部,質問が違っている。回収調査票をみる限り,介護労働を経済評価することに対する意見は都市部と農村部で異なる傾向を示している。確かに,2000年4月の公的介護保険の導入により,制度には介護労働は杜会化された。その事実・感覚をどの程度,自分のものとして受け止めることができるか。地域差があるのは当然かもしれない。 家族や杜会ではなく,地域で介護を支援しようとする新しい潮流もある。その代表が「地域通貨」であろう。すでに日本全国で200の組織・団体で流通しているが,地域通貨は介護労働ばかりでなく,世代間交流,地域活性化の観点からも21世紀杜会において非常に有効なツールと考える。地域通貨に関する考察も深め,国際学会で報告を行った。 来年度は最終年度である。在宅介護の実態(担い手,費用,相続との関連),介護労働を経済評価することの論拠などに関する学会報告,論文投稿などを通して,法定相続人以外の家族による介護提供に対して何らかの法・経済的配慮を行うことの合理性や可能性などについて総括する。
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