本研究の目的は、米軍と自衛隊に属する女性兵士の実態と表象の分析を行うことである。女性兵士の問題は、平和と女性との関係、フェミニズムにとっての暴力の問題、女性の権利と関係し、現代のジェンダー研究において重要なトピックのひとつである。しかしながら、これまでの研究書からは女性兵士の実態というものが十分見えてこない。兵士たち自身の声が聞こえてこないのである。女性兵士といっても、軍での階級や職務、年齢やエスニシティ、宗教も多様である。こうした多様性も考慮して議論を深める必要がある。また国ごとによっても女性兵士の見方やおかれている位置も異なる。その配偶者についての議論も欠如している。必要なのは、女性兵士たちの多様性を考慮し、彼女たちの意見に耳を傾けることであろう。同時に、観念的な議論に終わらないためにも、一時資料の読解を通じて、女性兵士の歴史的生成過程を明らかにする必要がある。初年度は、在日米軍基地と防衛庁を訪ね、女性兵士とその配偶者とのインタビューについて担当者と議論を重ねた。米軍基地は関東横須賀と沖縄を訪問した。自衛隊については、まだ女性兵士との会見に至っていない。インタビューに加え、公文書館や図書館を利用し、女性兵士についての雑誌、新聞記事などを調べた。とくにアメリカ合衆国における女性兵士をめぐる国会での議論や報告書などの一時資料を入手したことで、女性に軍が門戸を開く過程が明らかになった。そこでは軍内部の男性からの猛反対が認められた。
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