1.第2次世界大戦後の東アジアにおける国家的性売買統制の比較史的研究 韓国・沖縄・日本本土・台湾について文献収集・フィールドワーク・研究交流を実施し、日本がこれら4地域に定植した公娼制度が大戦後にはそれぞれ冷戦に照応して新たな公娼制度に変容した過程を明らかにした。大戦後の公娼制度に関しては、従来一般に、GHQの廃娼令や国際条約に規定されて廃止され、国際的潮流に即して売春防止法が制定されたと説明されている。だが本研究は4地域の性売買統制の変容過程を検討してこれまでの定説を覆し、米国による冷戦政策が東アジア諸地域に米軍の利害を反映した新しい性売買統制を定着させた事実を明らかにした。 2.冷戦下の日本における女性の受難と抵抗についての研究 冷戦下の軍事基地周辺・鉱山・在日朝鮮人コミュニティーを調査するために、秋田・大分・山口・兵庫・京都、静岡・青森、宮城・奈良各府県においてフィールドワークを行い、特に(1)米軍性暴力事件と被害女性の闘争、(2)米軍基地買売春と在日朝鮮人の関係性、(3)花岡事件に取材した作品で朝鮮戦争反対・日朝中の民衆連帯を表現した作家・松田解子の足跡に着目して研究を行った。これらの研究により、日本における冷戦下の女性・在日朝鮮人の受難、一般に暴力や差別の被害者である女性や朝鮮人の側が落ち度や反社会性を非難され米軍側の罪が軽視されてきたこと、女性はただたんに冷戦の受動的被害者であっただけでなく抵抗の主体でもあったことを明らかにした。
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