研究概要 |
現行の自由連合州体制への批判が一般化し、プエルトリコの言論界においても国民国家概念の相対化が進んだ1980年代以降の時期について、ナショナル・アイデンティティの問題がフェミニズムの議論のなかでどう扱われてきたかを解明するために、プエルトリコ出身者が集中するNew Yorkにおいて、女性運動の研究者を対象に面接調査を実施した。New Yorkにおいて実施したインタビュー調査では、City university of New York, Hunter College, Director of Center for Puerto Rican Studies, Felix V. Matos Rodriguez、および、同センター、ジェンダー研究の研究員、Caridad Souza、Gina Lopez, State university of New York, Albany Campus、Director of Center for Latino, Latin America and Caribbean, Edna Acosta-Belen、City University of New York, City College, Director of Department of Latin American and Caribbean Studies, Iris Lopezらにインタビューを実施した。その結果、以下のような結論を得た。 アメリカ合衆国本土に、プエルトリコ人女性のフェミニズムと捉えられるようなまとまりはなく、フェミニストの異なるグループが散在している。最近ではトランスナショナルのレベルで、フェミニストたちが活動しているのが注目に値する。プエルトリコ、ビエケス島(Vieques)米軍基地の問題をめぐる女性たちの動きにも、その傾向が見出される。また、プエルトリコ人女性たちは、ラテン系女性たちとともに、women of colorのフェミニズムの一翼を担っている。このことは、アングロサクソン系アメリカ人女性のフェミニズムに欠落しがちなマイノリティ女性の視点や第三世界の女性たちの視点を米国フェミニズムのなかに持ち込む結果となり、フェミニズムの質の転換を求める勢力として彼女たちは重要な役割を果たしている。
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