研究概要 |
本年はUniversity of Illinois at Chicago, Latin American and Latino Studies Programにおいて、プエルトリコ女性に関する調査研究を実施した。 プエルトリコでは、女性問題解決に向けて女性たちが連帯することを最優先し、既成の政党政治の在り方に対し距離を置くようになった。このような勢力が、植民地に関する政治的議論や政党政治の政策に影響を与えた。しかし、シカゴにおいては、プエルトリコの政治の焦点である植民地問題をめぐる政治的対立が女性運動に大きく影響し、コミュニティ活動の衰退、女性運動の分散化、不在が問題となっていることが判明した。同時に、女性たちのアイデンティティもシカゴに住む者としての意識が育ち、プエルトリコ人としてのアイデンティティの内実に幅があることが判明した。従って、米国本土におけるプエルトリコ女性においては、プエルトリコ同様の政治的影響力を明確に見出すことはできない。しかし、プエルトリコ人女性たちは、マイノリティグループとして草の根運動のレベルで白人中心主義の政策や女性解放運動に異議を唱えている。また、プエルトリコとは異なる環境に生きるプエルトリコ人女性はそのナショナル・アイデンティティも現実に見合った多様なものに変容しており、それがこれまでのネイション、ステイト、アイデンティティの概念に新たな視点を提供している。つまり、プエルトリコとは異なる条件からではあるが、既成の政治の枠組みに対して疑問を呈していると言える。
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