今年度は配票調査を行い、障害児の母親の意識について以下の結果が得られた。 (1)「過去1年間に感じたり、経験したこと」に関する問いへの回答からは、「外出が思うようにできない」「自分の時間がない」「体力・気力面がきつい」など、「自己の喪失」に関わる内容が母親の意識の中により強く認識されていた。(2)子のケアに際して感じる疲労感は、「子どものケアでくたくたになったと感じる」「1日のケアが終わると疲れ果てたと感じる」といった項目に対して、「まあまああてはまる」から「かなりあてはまる」の間の数値が算出され、母親の疲労感が強いことが示された。(3)子どものケアに際して感じることとして強く認識されていたのは「子どものことだけでなく、自分も楽しむことが必要だと思う」「子どものために、とにかく精一杯がんばろうと思う」「子どものことをみるのは、自分が当然果たすべき役目だと思う」であった。これらのことから、「子へのトータル・コミットメント」の意識、「自己の回復」を図ろうとする意識、ケアに関する役割規範意識など、さまざまな内容を含んだ意識を母親が抱いていることが示唆され、これに関しては、より詳細な分析が必要であると考えられた。 今までの科学研究費補助金の研究より、障害児の母親が有している母親意識として、子のために自己を犠牲にして、療育に専念しようとするトータル・コミットメントがあること、そしてそれには母親役割規範意識がかかわっていること、そして時間の経過とともに、それが自己の喪失感、そして自己の回復を図ろうとする意識に変容することが、質的研究、量的研究の両面より明らかにされた。
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