平成14年度はこの研究の目的1となっていた看護学教科書、看護学論文のジェンダー分析を13年度に引き続き行った。日本の査読のある看護学雑誌(日本看護学会誌、日本看護科学学会誌)において行ったが、その分析の内容としては、結果、考察等でジェンダーに敏感な視点を持って(男性、女性と分けた結果の出しかたをしているか、考察等で生物学的視点、あるいは文化社会学的性に敏感な視点)分析されているかの検討を行った。論文の結果で導き出されたものでは、必然的に男女別に分けて結果を示しているものは少なく、偶然対象に男女が集まった場合、その性別を分けているというのにとどまっていた。考察ではジェンダーに敏感な視点を盛り込んだ考察はなかった。日本の看護学雑誌においては、ジェンダーの視点はまだ根付いていないようである。 次に、医療者のジェンダー観を知る手始めとして、医療の現場であるいは健康に係わる現場でジェンダーバイヤスと思われるものには何があるかということを看護にかかわる学生に問うことをしてみた。介護とジェンダーに関し、敏感に反応した。特に介護者となる女性とその家族の女性に対する反応ということについて、反応している学生が多く見られた。これらの学生は研究者の授業の中でジェンダーに関する教育がされている学生で、研究者が教授する以外の科目あるいは演習の中で、ジェンダーの視点を持って臨んだ結果であると分析する。また研究者が卒業研究で指導した学生はやはり介護者のジェンダー観ということについて行ったが、介護を行う者は自分の境遇を「仕方がない」、「当たり前」という表現をし、ジェンダーの意味、言葉も知らないものが多かった。これらは医療者のジェンダー教育の必要性を示唆するひとつとも言える。また、健康とジェンダーについて衛生統計を使った分析を行っている。これは従来の衛生統計の見方ではなく、ジェンダーの視点を入れることによりそこから見えてくるものが異なり、次の健康に対するアプローチを変えることが出来ると考えている。
|