平成13年度においては、雇用動向の把握と労働組合の一次資料の収集を中心に行なった。 まず、研究課題である日独の1990年代における雇用の女性化、多様化に対する労働組合政策についてジェンダー視点から分析するための作業として、労働統計資料の収集を行い、これを用いて1990年代の労働市場を概観した。その結果、日本の労働市場については、女性短時間雇用者の増加傾向、女性雇用者にみるM字型就労とその若干の縮小傾向、いくつかの産業での女性雇用者の比率の高さなどを確認できた。またドイツに関しては、1990年のドイツ統一後、女性の就労はM字型から脱却するものの、女性のパート化が一段と進行する傾向が確認できた。このような日独の労働市場の編成と労働法制がどのような関連をもっていたのかという検討課題があがった。 次に、本研究の分析対象である1990年代に発行された日独の労働組合の一次資料の収集を行なった。日本については日本労働組合総連合会(連合)の、ドイツについてはドイツ労働組合総同盟(DGB)の一次資料の収集を行なった。資料調査を進めながら、資料分析の際に不可欠な「労働組合のジェンダー化」の指標について、また日独比較の比較の枠組みなどについて検討した。分析対象の期間に、連合は男女共同参画社会に向けた法整備や国際レベルの女性運動の動向と平行して、「行動計画」を設定している。ドイツについては、ドイツ統一やEU統合の影響下で、労働組合が変革を迫られ、その流れの中でジェンダーを取り込んでいく徴候が見え始めたことを確認した。
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