研究の調査地と調査課題としてあげたものは、(1)公害問題(宮崎県土呂久鉱毒問題等)、(2)生活環境問題(滋賀県琵琶湖の合成洗剤問題等)、(3)開発問題(沖縄県石垣市白保の新空港建設問題等)、(4)原発問題(青森県六ヶ所村反原発運動等)である。 このうち特に、特に集中的に情報収集と聞き取り調査を行ったのは、(1)の宮崎県土呂久鉱毒問題と(3)沖縄県石垣市白保の新空港建設問題についてである。固定化された性役割分業のゆえに、結果として、上記の運動にかかわる女性たちは、生業や生活の基盤となる自然環境の破壊や健康の問題に敏感にならざるを得なかった。それら女性達を担い手とする「生活の論理」と、外部から開発を受け入れる男性たちの(家父長制的な)「開発の論理」との間にはもちろんのこと、さらに、一見女性達の運動を支援するかのように外部から入り込んでくる「自然保護の論理」との間にさえ、微妙なギャップが生じていた。そのようなギャップに対して、個々の事例では、対応の仕方に差が生まれたことがわかった。 (1)については、聞き取り調査のプロセスでは、高齢化した被害者の証言をデジタルビデオに収録し、それらをDVD化し保存する作業を行った。一昨年度より、市民運動側で被害者の支援を行ってきた川原一之氏所蔵の「土呂久鉱毒事件関係資料」を一括して借り受け、資料の複写作業を行ってきたが、それらの資料に関してデータベース化の作業を進めた。
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