研究概要 |
紀伊半島全域における渓流水を全163箇所で採水し,同位体比の空間分布特性を調査した.また,和歌山市において,渓流水を継続的に採水し,同位体比の時間変動・季節変動を調査した.同位体比の空間分布特性から緯度効果,内陸効果,高度効果,雨陰効果,雨量効果の影響について考察した.その結果,緯度,標高,海岸からの距離と同位体比との関係はみられたが,降水量との関係はみられなかった. つぎに,同位体比分布に与える地形効果を定量的に明らかにするために重回帰分析を行った.その結果,和歌山県の地表水の同位体分布に影響を与える効果として,緯度効果の影響が最も強いことが明らかとなった.しかし,線形回帰式だけでは同位体分布を説明できないことが明らかとなった.そこで,降水過程などの気象データを考慮した解析を実施した.その結果,降雨特性に関して,降水同時発生率を用いて紀伊半島の降雨特性の分類(zone分け)を行い,各zoneにおいて同位体比の特性を考察し,同位体比の空間分布が降雨特性と関連があることを明らかにした.さらに,領域内で最も早く降水が観測される場所を決定する解析方法(early-dropped rainwater analysis)を新たに提案し,レイリー過程に基づく同位体分別過程により,同位体比の空間分布特性の説明を行った.その結果,総観規模の擾乱により,紀伊半島南西部地域では同位体分布が重くなり,降雨時間間隔の短い集中的な降雨特性により,半島東部において同位体比が重くなることが明らかとなった.
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