研究分担者 |
大槻 恭一 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (80183763)
柳 哲雄 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70036490)
神野 健二 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80038025)
久米 篤 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (20325492)
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研究概要 |
本研究では,水循環における「流域生態系」の意味・意義を明らかにし,土地利用別「生態系水循環モデル」と「総合流域生態系水循環モデル」による流域水資源管理システムの構築を行うことを目的とした.上流域-中流域-下流域-沿岸海洋の水循環・水環境について個別的なモデル化を行なった.フィールド調査・研究で検証を行い,森林,耕地における蒸発散量及び河川水質の形成機構についての研究を進め,上流流域を被覆する植生の質や量が,下流河川水の水質と流量特性に大きな影響を与えていることを明らかにした.さらに,地下水の水質形成,沿岸海域における河川水流入の影響評価も行った. 流域を被覆する植生は,様々な形で流出特性に影響を与えていた.山火事跡地の二次遷移の進行に伴う流出特性の解析より,山火事の後には河川流出量が増大し,植生の回復に伴って流出量が減少した.一方,渇水時の流量はむしろ植生回復後に増加する傾向があった. 樹冠を覆う植生の違いが林床に供給される雨水に及ぼす影響は大きかった.マテバシイなどの常緑広葉樹では,林内雨と比較して樹幹流の量が多く,雨水が林床を直接撹乱することは少なかったのに対して,針葉樹,特にヒノキの場合は,林内雨の割合が高く,しかも,林床のAo層の発達が貧弱なため大雨の時には地表面の撹乱が生じていることが示唆された.その結果,管理が十分に行われていないヒノキ林においては,大雨時に大量の懸濁態成分の流出が見られ,林床土壌からの顕著な燐の流出が生じていることが明らかになった. これらの一連の研究によって,従来行われてきた流出負荷量の推定の方法では,植生の特性や降雨時の流出負荷量が適正に評価されていないこと,そして,博多湾等の閉鎖海域に対して,森林の変化が栄養塩負荷特性に大きな影響を与える可能性を示唆した.
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