生殖細胞に於ける自然突然変異の特異性を理解する目的のもとに平成13年度は以下のことを明らかにした。 (1)大腸菌のlacZ遺伝子を導入されたMutaマウス雄を用い、15〜20日令に於ける睾丸での自然突然変異頻度を調べた所(5.71±1.35)×10^<-5>であり、成熟し減数分裂の盛んな10週令マウスでの値(6.95±0.94)×10^<-5>と同じレベルであった。また15〜20日令のマウス3匹から61個の突然変異体を分離し、そのDNA塩基配列を決めた所、70%がCpG配列部位でのG:C→A:T変異であり、他の30%は何らかの塩基置換であった。欠失型変異と挿入型変異は1例も見いだせなかった。この特性も成熟した睾丸での特性と類似している。以上のことは精原細胞と減数分裂後の細胞での自然突然変異とが類似したものであり、減数分裂のプロセスでは特定の突然変異が増加することはないことを示唆している。 (2)突然変異生成の抑制に重要な役割を果たすことが知られているミスマッチ修復が生殖細胞で働いているかどうかを明らかにすべく、Mlh1遺伝子欠損マウスを本学野田哲生教授より譲り受け、これをMutaマウスとかけ合わせを行い、雑種第2代まで作成し、その中からMlh1(-/-)lacZ(+/+)マウスを選別した。平成14年度はこのマウスの15〜20日令での睾丸の自然突然変異特性を解析する予定である。
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