研究概要 |
ウニ幼生の骨格形態の変異を生み出した遺伝的な機構を解明する為の研究として,骨格形態の特徴がウニ胚の表皮に由来するのか,第一次間充織細胞(PMC)に由来するのかを明らかにするため,骨格形態の異なるナガウニ科の2種間で,PMCの由来細胞である小割球の移植を行った.実験に用いたナガウニ科のツマジロナガウニとホンナガウニは,非常に近縁で幼生骨格形態も似ているが,結合桿とよばれる骨がツマジロナガウニには2本,ホンナガウニには1本であるという違いがある.この形質を指標として,異種の小割球を移植された胚がどちらの種由来の幼生骨格を形成したかを判断した.その結果,ツマジロナガウニの同種の小割球を移植した胚(コントロール)は全て,自身の特徴を持った幼生骨格(結合桿が2本)を形成した.一方キメラ胚(異種の小割球を移植した胚)では,結合桿が1本の胚と2本の胚と両方が観察され,その頻度は,どちらの種が小割球提供者であるかによって若干の違いがみられたが,1本の個体の方が多かった.これらの結果からは,幼生骨格形態,少なくともナガウニ科2種における結合桿の本数の決定は,表皮またはPMという,どちらか一方の細胞によってのみ決められているわけではないことが示された.これまでに異種間でのPMCの移植は別の種で行われており、PMCが主に骨格の形態を担っていることが報告されているが、骨格のより詳細な比較により、ここの形質ごとに判断して、再検討する必要があると考えられる。ホンナガウニの同種間移植胚は骨格形成を観察することができなかったため、次シーズンでこのコントロールをとる必要がある.
|