2年間の研究で、ゼンマイ科について、1)分子系統解析と2)種属誌的研究を並行して行ない、この科の多様性を系統的に整理することを試みた。 1)ゼンマイ科の系統の解析については、rbcLをマーカーとして分子系統解析を行なった。この結果、ゼンマイ科の単系統性が再確認された。また、種属間の系統については、Miller(1971)の化石、現生植物を通じての比較解剖学的研究の結果と本質的には同じ結論に達した。この成果は2002年9月にオーストラリア国シドニーで開催されたマレーシア植物誌シンポジウムで口頭発表され(矢田部と村上)、その成果をTelopeaに現在印刷中である。また、この解析の結果、ヤマドリゼンマイはゼンマイ科のうちで独立した位置にあり、ヤマドリゼンマイ属を独立させるべきことが明らかになったが、その結果、これまでヤマドリゼンマイ近縁と推定されていたオニゼンマイの所属すべき分類群がなくなることになり、オニゼンマイを単型の亜属として記載する命名上の必要が生じ、これに対応する論文(矢田部、村上と岩槻)を準備した。 2)ゼンマイ科の種属誌としては、岩槻が準備しているSpecies Plantarum(地球植物誌)の原稿がほぼ完成しており、ごくわずかの最後の詰めを行なって近く出版されるはずである。また、矢田部が分担しているFlora Malesianaの原稿や、矢田部と岩槻が協力分担するFlora of Chinaの準備も順調に進んでいる。 これらの研究成果は、ゼンマイ科についての知見を大幅に前進させるものであり、植物の多様性研究に貴重な貢献をもたらすものである。
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