研究課題/領域番号 |
13852004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前野 悦輝 京都大学, 国際融合創造センター, 教授 (80181600)
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研究分担者 |
石田 憲二 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90243196)
山田 耕作 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90013515)
矢口 宏 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30314173)
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キーワード | ルテニウム酸化物 / スピン三重項超伝導 / カイラル超伝導状態 / Sr_2RuO_4 / モット絶縁体 / モット転移 |
研究概要 |
ルテニウム酸化物Sr_2RuO_4(転移温度はT_c=1.5K)は、本研究メンバーによる超伝導の発見とこれまでの共同研究等で、電子対のスピン状態が合成スピンS=1の三重項であることが確実となった。本研究の目的は・軌道波動関数も含めてSr_2RuO_4の超伝導状態を確定するとともに、この物質を舞台にスピン三重項の超伝導状態に関わる新しい物理現象を開拓することにある。初年度は以下のテーマに沿って研究を行った。 (1)単結晶育成と関連新物質の開発:極純良なSr_2RuO_4の単結晶を研究に安定供給できる技術を確立した。さらにSr_3Ru_2O_7の大型単結晶の育成にも成功し、そのメタ磁性転移が量子臨界現象として扱えるという、新しい概念を提案した。また4d・5d遷移金属酸化物の新物質開発を進め、イリジウム系パイロクロア酸化物などの低温物性を始めて明らかにした。 (2)Sr_2RuO_4の超伝導ギャップ構造と超伝導多重相図の研究:比熱・熱伝導率・交流磁化率の研究から・超伝導ギャップは円筒形のフェルミ面上で、円環状のノード(ゼロとなるところ)をもつことを強く示唆する実験結果を得た。また磁場中で2種類の超伝導状態を誘起することに成功した。 (3)核磁気共鳴によるSr_2RuO_4の超伝導波動関数の確定:ルテニウムと酸素の核磁気緩和率とナイトシフトの精密測定を進めた。これに関連して、重い電子系超伝導物質UNi_2AI_3の超伝導がスピン三重項であることを示す結果を得た。 (4)時間反転対称性の破れに伴う新奇現象:電子対の軌道角運動量が時間反転対称性を破る、いわゆるカイラル状態に特有の新奇超伝導現象の観測に関わる理論を構築し、上部臨界磁場の温度依存性から、それを裏付ける結果を得た。 (5)スピン三専項超伝導の理論の展開:Sr_2RuO_4の超伝導対称性と超伝導メカニズムを明らかにする理論構築を進めた。
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