研究概要 |
焼結ダイアモンド(SD)を用いた川井式高圧装置により下部マントルの構成と起源に関する実験を行ってきた。海洋底地殻(MORB)物質の相構成を37Gpa(深さ950km相当)まで決定し、深さにともなう密度変化を推定し地震学的密度モデルと比較した。その結果、沈み込んだMORBは下部マントル上部では周辺のマントルより高密度であるが1500-2000kmではこの関係が逆転してこれより深い領域では滞留する可能性が示された。 ペリドタイトの33GPa(深さ900km相当)で決定された溶融関係をもとにC1コンドライト始源マントルから成るマグマオーシャンの結晶分別によるマントルの分化を検討した。Mg, Si, Al, Fe, Caの主要5元素についてのマスバランス計算から34%のMg-Pvと3%のCa-Pvの分別によって深さ約1500kmを境に下方の高密度、高温のリザーバーと上方のペリドタイトマントルが生ずるモデルを提唱した。 SDアンビンをSPring-8の六方押しプレスで加圧して、鉄の高温高圧X線その場観察を44GPa,2100Kまで放射光を用いて行った。ε鉄(低温相)とγ鉄(高温相)は相互に直接相転移することが確認され、近年ダイアモンドアンビルセル(DAC)による実験から幾つかの研究グループによって主張されてきた新しい固相βの存在は否定された。得られた相平衡関係の超高圧力域への外挿は地球内核の構成物質としてε鉄が有力であることを示唆する。 放射光を利用したラジオグラフィーによって偏差応力下のフォルステライト試料の形状変化を6.5GPa,1200℃まで直接観察した。その結果、塑性変形量は試料急冷法やガイドブロックの変位からの従来の推定よりかなり小さいことが判明した。今後試料セルの改良、カメラ解像度の向上行いSDを用いた下部マントル条件下の実験に発展させる。
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