本年度は、(1)本研究で熱輸送デバイスとして対象としているSEMOS heat pipeの熱輸送限界の把握実験、および(2)熱電素子にSEMOS heat pipeを装着した熱回収ユニットの試作・作動実験とを行った。 (1)については、内径0.6mm〜1.5mmの銅パイプ製の2ターンSEMOS heat pipe(加熱・冷却部長さ50mm)について、水、エタノール、R141bを作動流体として、熱輸送限界の実験を液体封入率αをパラメータとして行った。その結果、熱輸送限界は(a)αには大きくは依存しないこと、(b)管断面積にほぼ比例すること、(c)水とエタノールとでほぼ同じ値(R141bのそれよりかなり高い値)を示すことから蒸発潜熱と単純な関係にはないことなどが判明した。(a)の結果は(A)熱輸送限界はαの大きくは依存しないので熱抵抗の小さいα=50%程度が適していること、(b)の結果は(B)管径を細くしてもターン数を増大すれば熱輸送限界は低下しないこと、(c)作動液体として水やエタノールが適していることを意味している。 (2)については、内径0.5mmのSEMOS heat pipe(作動流体はR141bで10ターン)を熱電素子(小松エレクトロニクス製のThermoelement)の高温側と低温側とに装着し、それぞれのheat pipeを温冷水により加熱・冷却する熱回収ユニットを試作し、ユニットによる発電特性を実験的に調べ、特にheat pipeと熱電素子間の熱抵抗の軽減方法を調べた。その結果、十分な発電量を得るためには、熱電素子に一体化したheat pipe接合部をもうける必要があることがわかった。
|