研究概要 |
油水エマルション系における高効率な光反応:前年度までに、ピレンやペリレンなどの芳香族炭化水素と電子受容体としての1,4-ジシアノベンゼンを含むベンゾニトリル溶液と青酸ソーダ水溶液を混合したエマルション系において、芳香族炭化本素の光シアノ化反応が効率良く進むことを明らかにしてきた。特に、エマルションの回転攪拌依存性から収率に対する油滴サイズ依存性が現れることが示唆された。そこで、本年度においてはペリレンの光シアノ化反応を取り上げ、単一油滴レベルにおける実験を行った。まず、単一油滴レベルの実験を行うためのレーザー捕捉・顕微光反応・蛍光計測システムを作製した。これに基づき、NaCN水溶液中に分散させたペリレンと1,4-ジシアノベンゼンを含むベンゾニトリル油滴を一粒のみレーザー捕捉し、光照射しながら蛍光測定を行った。その結果、光照射に従ってペリレンの蛍光強度が低下するとともに、生成物である1-シアノペリレンの蛍光強度が増加することが分かった。これを解析することにより、収率に対する明確な油滴サイズ依存性を示すことができた。収率は油滴半径の逆数に比例して直線的に増加することが示された。 液/液界面の全反射蛍光分光:ピコ秒時間分解全反射蛍光法を駆使して、油水界面の微視的構造を明らかにした。特に、今年度は油水界面における三点水素結合を介した分子認識を実験的に示した。今後、界面の新たな機能としての「分子認識界面」の概念を提示する研究を積極的に進める。
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